大阪府警察 交番等の最適化計画(令和3年11月)

2023/03/18

交番 行政文書公開請求 最適化 大阪府警 統廃合

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※画像は大阪府警察より引用

概要

令和4年1月に大阪府内の交番の統廃合が報道され、大阪府警察に対し行政文書公開請求を行ったところ、地域部地域総務課が作成した「交番等最適化計画の概要(令和3年12月)」を入手しました。
交番等の最適化について記事にまとめましたので、是非ご覧ください。
なお、入手した行政文書は下記の参考文献に掲載しています。

経緯

◯令和3年11月
「交番等の最適化計画」が策定される。
◯令和3年12月
警察本部地域部長が吉村知事をはじめとする大阪府側に説明し、了承を得ている。
◯令和4年1月
交番の統廃合について報道される(NHK、朝日新聞、読売新聞など)。
◯令和4年8月
「交番等の最適化計画」が未公表だったため、大阪府の監査で情報周知が不十分との指摘を受ける。
◯令和5年4月
大阪府警察ホームページ上に「交番等の最適化計画の概要(令和5年4月)」と「交番等の最適化計画」が公表される。

交番等の施設数の現状

昭和43年 950か所

昭和49年 603か所

2交替勤務から3交替制勤務への変更に伴って削減した。

令和3年 645か所 (交番599か所、駐在所46か所)

大規模な開発・人口増加・事件事故発生件数の増加等のため、交番の新設や駐在所の交番化等を実施した。近年は定員及び人員配置の見直し等で環境の変化に対応している。

背景と課題

勤務員の単独配置・分散配置

①勤務員の単独配置 122か所
警察官が不在となる「空き交番」になりやすい。
全国で単独勤務中における警察官の襲撃・拳銃奪取事案が発生している。
DV・児童虐待・特殊詐欺等への対策強化が求められ、交番勤務員の増員が困難である。

<対策>
◯昼間帯はパトカー勤務員による積極的な立ち寄りや幹部による交番巡視を行っている。
◯夜間帯は隣接する交番勤務員と合同で勤務している。
 
<参考>
◯平成30年6月 富山県富山中央警察署奥田交番
被疑者は交番で勤務中の警察官を刃物で刺殺して拳銃を奪い、逃走中にその拳銃で警備員を射殺した。
◯平成30年9月 宮城県仙台東警察署東仙台交番
被疑者は拾得物を持って交番を訪問し、対応した警察官を刃物で殺害した。
◯令和元年6月 大阪府吹田警察署千里山交番
被疑者は交番から出動しようとした警察官を刃物で襲撃し重傷を負わせ、拳銃を強奪して逃走した。
◯令和3年3月 大阪府河内警察署若江交番
被疑者は拾得物を持って交番を訪問し、対応した警察官に小刀を突きつけた。警察官が拳銃を向けて制止し、公務執行妨害と銃刀法違反(所持)の容疑で現行犯逮捕した。

②勤務員の分散配置
大きな事件が発生した場合、多数の警察官を一挙に投入する必要がある。しかし、地域警察官の人数には限りがある一方で、全ての交番等に分散して配置せざるを得ず、分散した配置が足かせになることがある。

施設の老朽化・狭隘化

 <具体例>
◯外壁の一部崩落
◯雨漏り
◯電気設備が不十分
◯防犯カメラ・交番用端末の設置等、機能強化を進める上で支障あり
◯警察官の勤務環境の悪化

①耐用年数を超過している施設 174か所

②建築後50年以上経過している施設 148か所
昭和40年代に建てられた交番等が多いため、今後、耐用年数を迎える施設は毎年10か所以上増加する。しかし、交番等の建替えが年間3~4か所にとどまっているため、老朽化の状況は悪化する一方である。

③旧耐震基準で建築された施設 278か所
防災活動の拠点としての耐震性にも懸念がある。

交番等の間の業務格差

①受持人口が5万人近くになる交番と千人以下になっている交番

②隣接する交番等の間の距離が500m以内 62か所

交番等の統合・移転・新設には多くの業務量や多額の費用を要するため、社会環境や治安情勢の変化に即して遅滞なく対応することは困難である。結果的には、受持ち世帯数や人口、事件事故の発生状況等について交番等の間に格差が生じ、非効率である。

安全対策等に要する費用

いずれも、施設数の多さが課題となり、莫大な費用と時間が必要になる。

①高度セキュリティ化
警察官に対する襲撃や拳銃の奪取事件を防止するため、交番等に防犯カメラ・センサーライト・センサーチャイム・緊急通報装置・遮蔽板等を整備する取組を進めている。

②オンライン化
交番等で取り扱う遺失拾得届や相談、最新の事件情報等をリアルタイムで共有するシステムの導入を進めている。

社会環境の変化

スマートフォンの普及等による通信環境の発達やモータリゼーションの進展に伴う交通手段の充実等、社会の利便性が増す現在、交番等の利用状況も大きく変容している。

<参考>
110番通報の約77%が携帯電話から行われている(令和4年中の有効受理件数より)。

目的

複数勤務体制の確立

勤務員の総数は減らすことなく、核となる交番等に人員と機能を集約して複数勤務体制を確立することで、より柔軟な事案対応が可能となり、実質的な対処能力を向上させることができる。 
パトロール等の活動時間の確保や警察官が交番に不在となる時間の削減につながる。

施設の安定的維持

「施設の長寿命化」と「総量最適化・有効活用」を柱とする「大阪府ファシリティマネジメント基本方針」に基づく整備計画を進める必要がある。最適化を通じて老朽化した施設の数を削減しつつ、建替えを加速させることで、住民の方々が安心して利用できる施設として、安定的に維持管理していくことに繋がる。

交番等の間の業務格差改善

所管区の世帯・人口が少ない地域に所在する施設や事件事故の発生等が少ない地域に所在する施設、隣接する交番等が近接している地域に所在する施設は統合を検討する。
世帯・人口が増え、事件事故の発生が増加している地域は周囲の交番等の移転や所管区の見直しを検討する。
交番等の間の格差の是正や非効率の改善を図り、必要な所に必要な警察力を、より効率的に投入する体制を構築する。

交番等の機能の充実強化

交番等の数を削減、集約し、全体的なコストダウンが実現すれば、交番等のセキュリティ強化やネットワークの構築等の機能強化を促進することができ、住民の方々の利便性の向上や警察力の向上といった効果が期待できる。

進め方

期間

令和4年度から令和13年度まで。取組の状況を検証しつつ必要に応じて見直す。

計画施設数

◯交番と駐在所の施設を約600か所以下に抑制する。
◯交番を約60か所削減する。

最適化の対象とする交番等の目安

①統合
◯所管区の世帯数及び人口が少ない地域に所在する施設
◯事件事故の発生等、業務負担が少ない地域に所在する施設
◯隣接する交番等が近接している地域に所在する施設
◯老朽化・狭隘化している施設
◯交番等の最適化に住民の理解が得られる地域に所在する施設

②新設
◯開発等により、世帯・人口が増加した地域
◯事件事故の発生等、業務負担が増加している地域
◯自治体・住民等から土地や建物の無償提供等、各方面の協力が得られる地域

最適化に伴う措置

◯令和3年12月の概要:交番等の勤務員の数は削減しない。
→令和5年4月の概要:警察署毎の勤務員等は削減しない。
◯廃止する交番等は当面の間、警ら連絡所として運用することも可能とする。
◯交番等を廃止した地域はパトロールや本部方面機動警ら隊の支援を強化する。
◯移動交番等の配備・運用等の補完制度を検討する。
◯交番等を廃止した場合、犯罪発生状況の変化等、住民が不安に感じている事項について積極的に情報を提供し、不安解消に努める。「交番だより」や各警察署のホームページなどを活用する。
◯犯罪発生状況や事件事故への対応状況の変化等、最適化の影響について検証し、計画の見直しに反映させる。

今後の方向性

◯警察署と警察本部とが協議を行って具体的計画を策定する。
◯地域住民の方々に対して事前に十分な説明を行い、理解を得るよう努める。

推進結果

令和3年度

1警察署の2交番が統廃合された。本計画とは別で実施された。

令和4年度

8警察署の8交番が統廃合された。

参考文献

※下記は主に参考にしたもの

大阪府警察「交番等最適化計画の概要」令和3年12月
※行政文書公開請求により入手。リンクを押下するとGoogleドライブが開きます。
大阪府警察「交番等の最適化計画」令和3年11月
大阪府警察「交番等の最適化計画の概要」令和5年4月
https://www.police.pref.osaka.lg.jp/sogo/katsudo/5/13864.html
大阪府警察「令和3年大阪府警察重点目標推進結果報告書」
https://www.police.pref.osaka.lg.jp  
大阪府監査委員事務局「交番及び駐在所の最適化の取組について」
https://www.pref.osaka.lg.jp 
大阪府議会「令和4年2月定例会警察常任委員会」
https://ssp.kaigiroku.net/tenant/prefosaka/pg/index.html 
朝日新聞「交番の1割、統廃合へ」2022年1月15日朝刊23ページ
朝日新聞「交番1割統廃合、知事「了承した」」2022年1月18日朝刊19ページ
読売新聞「府内交番 1割統廃合へ」2022年1月22日朝刊27ページ

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